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Channel: z et n.
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ぼくのすべて

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ときどき
ぼくのなかを
悲しみがとおりすぎる
それはまるで
青い空のように澄んでいて
そこに浮かぶ白い雲のように
掴もうとしても掴めない
ぼくは
意味が欲しくて
あたりを探してみたけれど
ぼくとそこに拡がる空と大地以外
何にもなかった

しばらく俯いて
すこしだけ泣いたら
ぼくの涙が沁み込んだその地面から
小さな芽が顔をのぞかせた
それはみるみるうちに
そのうでを伸ばし
小さな花をつけた
ぼくははっとして
あたりをもう一度見回した

ひとりだと思っていた世界には
空があって
雲があって
大地があって
光があって
空気があって
ぼくがいて
そして花が咲いた

何にもないと思っていたそこには
すべてのものが存在していた
ぼくには
それに気づくだけの
意識がなかったのだ

もう一度
空を見上げる
ぼくはもう悲しまない
何故なら
もうそれは
ぼくにとって悲しみなどではなく
喜びなのだから
かけがえのない
すべてなのだから


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